棒に当た

ったら吉

『パリからのおいしい話』 戸塚真弓

インターネットサーフィンをしていた時にぶつかったフランス生活を綴るブログの中でおすすめエッセイ本として取り上げられていたのが戸塚真弓さん。

全く存じ上げなかったが、地に足のついた生活を感じ取れる文章は読みやすく、この一冊を読み終えた後、早速彼女の著書を幾冊か注文してしまった。

 

『パリからのおいしい話』には31編のエッセイが入っており、トリュフの話からフランスでの水事情、露天市の話など、フランスにおける食文化事情を実際にその地に住んでいるからこそ感じられることが綴られている。このエッセイが連載されていたのは1984〜1989年になるので、多少古さを感じるところはあるかもしれないが、それでもこのエッセイが魅力的なのは、きっと彼女がところどころため息を漏らしながらもこのフランスでの生活を心から楽しんでいるからだろうか。読んでいて素直に彼女が体験したことをこちらも体験したくなってしまう。

この本の中に彼女の娘さんの写真なども載っているのだが、そういった打ち解けた本の構成が彼女をより身近に、なにも構えることなく読み進められる要因になっているのかもしれない。

あとがきに「ART DE VIVRE」という言葉が出てくる。専門は何ですかと尋ねられた筆者が何もない、と返した後に、「ART DE VIVRE<暮らしの芸術>です」と返せばよかったと振り返ったシーンである。彼女によると、フランスでは暮らしをより良く、豊かに美しくすることをそういうのだそう。日本語ではただの「主婦業」としかいえない家庭の仕事が、フランスでは大切にされていることがわかる。

 

この文に当たった時、はぁ〜と共感してペッと付箋を立ててしまったけれど、日本ではこういった生活を豊かにする仕事が「主婦業」としか呼ばれないなんてちゃんちゃらおかしな話である。生活を豊かにすることなくして、果たして人は幸せを感じることができるのだろうか。日本でも主婦の仕事に焦点があたるようにはなってきているとは思うが、あらためて付箋などたてずとも、「当たり前じゃん〜」と本を閉じてしまえるくらいにはなりたいものである。(付箋を立てたのは私自身なので、私の中にも主婦業にこういったレッテルをはっている、洗濯物干すのめんどいな〜だとか、そういったものがあるわけなので、人のことは全く言えない、自身の考えの根底を先に改めるべき、ううん・・・・。)

 

パリからのおいしい話 (中公文庫)

パリからのおいしい話 (中公文庫)